正式名称は「摩訶般若波羅蜜多心経」または「般若波羅蜜多心経」である。お経の中では非常に有名で、宗派を超えて1600年以上もの長い間唱えられている。『般若』とは智慧(ちえ=知恵)のことであり、『波羅』は彼岸(悟りの境地で、この世の苦しみから抜けた世界)のことであり、『蜜多』は至るという意味であり、『心経』とは大切な教えという意味である。
般若心経とは『この世の苦しみから救われ悟りの境地へと導かれる大切な教え』という意味である。
般若心経の大元とされる「般若経」は、大乗仏教の経典の中でも特に古い部類であり、紀元前後~1世紀ごろにはすでに成立していた。これをかの玄奘三蔵(げんじょうさんぞう=西遊記の三蔵法師)が西方から中国に持ち帰り、完訳し集大成させたものが「大般若波羅蜜多経」である。しかし、このお経は約600巻という膨大なものであった為唱えることが容易ではなかった。その結果、約600巻の内容を抜粋し分かりやすくまとめたものが般若心経だと一説では言われている。
僅か300字足らずの本文に大乗仏教の心髄が説かれているとされ、複数の宗派において読誦経典の一つとして広く用いられている。
【本文と読み方と意味】
※般若心経の本文の部分は左右に動かせます。観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空
(かんじざいぼさつ ぎょうじんはんにゃはらみたじ しょうけんごうんかいくう)
※観自在菩薩様が 智慧を完成させるすごい修行をしていた時に 心と体は全て『空(くう)』だということがわかった
度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空
(どいっさいくやく しゃりし しきふいくう くうふいしき しきそくぜくう)
※この世のありとあらゆる苦しみから解放された 舎利子よ この世の全てのモノや現象には実体がないんだ
空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相
(くうそくぜしき じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ しゃりし ぜしょほうくうそう)
※この世の全てのモノや現象には実体がないんだ 私達の心もまた空なんだ 舎利子よ この世のあらゆることは空なんだよ
不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中
(ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん ぜこくうちゅう)
※この世のあらゆることが空だから生まれることも消滅することもない 汚れることも綺麗になることもない 増えることも減ることもない この世のすべてが空なんだ
無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法
(むしき むじゅうそうぎょうしき むげんにびぜっしんい むしきしょうこうみそくほう)
※なにもない 私達の心も体も 眼・耳・鼻・舌・体・心もない 色・声や音・香り・味・触感など感じるものはなにもない
無眼界 乃至無意識界 無無明亦 無無明尽
(むげんかいない しむいしきかい むむみょうやく むむみょうじん)
※眼に見えるこの世界も 心の中の世界もない 人生の苦しみの原因が無くなったり苦しみの原因が無くなることが無くなったり
乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得
(ないしむろうし やくむろうしじん むくしゅうめつどう むちやくむとく)
※人生の究極の苦しみが無くなったり無くなることが無くなったり お釈迦様が説いたこの世の4つの真理もないんだ 知ることも得ることも無いのだから
以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故
(いむしょうとくこ ぼだいさつた えはんにゃはらみったこ)
※お釈迦様が説いた方法自体が無いのだから 菩薩様は智慧を完成させている
心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想
(しんむけいげ むけいげこ むうくふ おんりいっさいてんどうむそう)
※心を迷わすものがない 心を迷わすものがないのだから 恐れることは何一つない
あらゆる感情を生む悪い妄想はしないようになる
究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故
(くうぎょうねはん さんぜしょうぶつ えはんにゃはらみったこ)
※苦しみから解放された安らかな境地にたどり着くんだ 様々な仏様や菩薩様達 言葉で表現される智慧ではない本当の意味での智慧が理解できるときそれがよりどころとなる
得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
(とくあのくたらさんみゃくさんぼだい こちはんにゃはらみった)
※完全なる悟りを得て苦しみから解放されている 智慧の完成とはどんなものかを知るべきだ
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪
(ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ)
※計り知れない力を持った 他に比べるものがないほどの 最上の真実の言葉
能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多呪
(のうじょいっさいく しんじつふこ こせつはんにゃはらみったしゅ)
※私達全ての苦しみを取り除いてくれる 偽りのない真実 智慧の完成の為に
即説呪日
(そくせつしゅわつ)
※次のように説かれた
羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶
(ぎゃてい ぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか )
※注※ 【サンスクリット語のご真言】
ここの部分はどの国でも訳されることはない、
なぜなら『仏様が悟した最強の真実の言葉』 だからである。
般若心経
(はんにゃしんぎょう )
※以上が智慧の完成の神髄である。
日本では仏教各派、特に法相宗・天台宗・真言宗・禅宗が般若心経を使用し、各宗派独特の解釈をしている。 その他の仏教の各宗派では、浄土真宗は『浄土三部経』を、日蓮宗・法華宗は『法華経(妙法蓮華経)』を根本経典とするため、般若心経を唱えることはない。これは該当宗派の教義上、所依経典以外は用いる必要がないとされ、唱えることも推奨されていない。しかし教養的な観点から学ぶことは問題視されていない。